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新連載「賀川豊彦」のぶらり散歩ー作品の序文など(第10回『地殻を破ってー散文詩』)

今回は先ずトレトレの嬉しいお知らせをさせて頂きます。それは「賀川豊彦献身100年記念事業」の取り組みでも特に、記念出版となった『賀川豊彦とボランティア』の「解説」その他、熱心に関わってこられた浜田直也先生の新著『賀川豊彦と孫文』が神戸新聞総合出版センターより誕生した、という良き知らせです。

既に浜田先生の労作『中国史研究ー唐宋宗教史と清末民国政治思想史』(2006年、朋友書店)などを通して開拓的な研究は注目され、そこでも「賀川豊彦と中国」とりわけ「孫文」との関わりの地道な研究を重ねてこられましたが、今回は「賀川豊彦と孫文」を主題とした総括的な著作として見事に完成されました。

刊行のお話は伺っていましたが、予定より少し早い仕上がりで、しかも素人の私のようなものにも分かり易い読み物に仕上げられていて、待望の好著の誕生となりました。

そこで新著の表紙と最初のグラビアの写真を、お許しもえないでここにUPさせていただきます。


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              「賀川豊彦」のぶらり散歩

                
                ―作品の序文な―


                  第10回


               地殻を破って―散文詩


           大正9年12月6日 福永書店 452頁


 賀川豊彦の作品の中で、特別の輝きを放つものは、何といっても彼が瞑想のうちに書き綴った随筆、彼のいう「散文詩」だと思います。

 今回「新連載」として「ぶらり散歩」しはじめている「作品の序文など」というものも、実は彼の作品のはじめに収めた短い文章が、私には特別にオモロイと思って、わざわざそれをスキャンしながら、時間をかけて書き写す作業をすすめているのです。これほど、私にとって楽しい時はないからです。

 そして今回の『地殻を破って―散文詩』が、その後の数ある作品の中で、最初の随筆集であり、内容もまたそのすべてが秀逸なものなのです。

 「目次」が巻末にありますが、最初に「地殻を破って―散文詩」を収め、次に「自然・自然美・貧民窟(感想と印象)」が入り、最後に「馬の天国(短編小説と童話)と三部構成です。


            *             *


 『人物書誌大系25:賀川豊彦』によれば、上に掲げたように本書は大正9年12月6日に刊行されています。その初版本は手元にはなく、大正14年11月15日の「改版」を読んでいますが、それの奥付には「大正9年10月6日」となっています。

 そして「改版」では初版とは装丁を変えて、賀川の絵と思われる「蹴飛ばせ 汝の住む 遊星を」布に印刷し、文字も特徴のある筆跡を刻んでいます。


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 そしてこの作品には、豊彦の「口絵:彼は棺桶の蓋をあげて廻る・・」と「挿絵:地殻を破って・・・」の二つが添えられていますので、それもここにUPして置きます。


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 余程むかし気に入ったと見えて、冒頭の「地殻を破って」の「地球の精神」や「地球精神の復活」など、あちこちをワープロに打ち込んでいたことを思い起こします。印刷はして残していますが、あれらが残っていれば、こうしたところで、もっと紹介できるのですが・・・。

 ともあれ、ここに本書の「序」を書き写して、原書のスキャンを添えて置きます。

なお、書き忘れていましたが、賀川は「沖野岩三郎氏と中山昌樹氏に此書を捧ぐ」と巻頭に記しています。この二人は明治学院時代の同窓で、沖野は大正7年に「雄弁」に「日本基督教界の新人と其事業」を書いて紹介した人として、またダンテ研究者でもある中山はその生涯を通して賀川の気を許す友人であったことは、よく知られています。




                    


 わたしの魂よ、強く生きよ。善と美に対して強く生きよ。春先の麦の芽が黒土の地殻を破って萌え出づるごとく強く生きよ。混乱を越え、争闘と、怨恨と、暴行と、脅迫と、病弱を越えて強く生きよ。

 わたしの魂よ、正しくあれ! 常に張り詰めておれ。雪崩が落ちてきても、強くあれよ。わたしの魂よ、穽に陥れられても懼れるな。すべてを破って成長せよ。

 おまえは一人おってはならぬ。痛める魂を労り、傷つけるものに膏を塗れ。おまえは病児の友、跛者の助け手、盲者の手引き、白血球の仕事をせよ。強くあれ、私の魂よ、民衆は土耳古犬のように吠えたぐって、階級闘争を叫ぶとき、おまえは忘れられても、傷つける霊のために静かに解放を説いて来い。

 おまえは代議士になってはならぬ。おまえはもう幸いにして官吏にはなれぬ・・・全科が二犯できたから。牧師にも向かない。専門学校の先生にも駄目だ。おまえは新聞記者にもなれぬ。おまえは一生辻の乞食と淫売婦を友達として送れ! おまえは一生貧民窟を出てはならぬ! おまえは一生辻に立て! 路傍説教をやめるな! おまえには教会がないから、辻の石の上に立って、解法と罪のゆるしの福音を説け!

 わたしの魂よ、神戸に貧民窟がなくなったら大阪に移れ! 日本に貧民窟がなくなったら支那に移れ! おまえの魂は一生貧民窟に縛り付けられているのだ。

 雪崩のあったあとに空が真青に澄むように、わたしの魂の上に空が晴れる。わたしは地殻を破って甦る!

 魂よ、マッチ箱生活を理想とする安住の子の魂よ、おまえは落ち着いて内なるものの爆発する聲を聞け! 神は内なるものである。

 魂よ、内なるものがおまえに力づける。おまえは強いものだ! 人間の子の小使いとして充分労働に耐え得る。ナザレの大工のように、おまえも地上をまわって、善と労働をして来い。妥協のない愛に生きて来い。

 わたしの魂は強く生きる。噴火口の烟のごとく、海洋の潮のごとく、強く生きる。わたしの霊は自殺することが出来ない。死も棺桶も吹き飛ばしてしまった。死を飛び越えたわたしの魂は、墓地を廻って棺桶の蓋をめくって廻る!

 出て来い、凡百の魂よ、死の床より起きて来い! 地殻を踏み破って、立ち上がって来い! 起床の喇叭が鳴るではないか! 永き眠りより醒めよ! 罪の憂鬱の虜より解放せられよ! 因循と、麻酔と、善に対する虚弱より醒めよ!

 わたしは道徳に酔う! 外側の道徳は振り捨ててしまった。内側で醗酵した善がわたしを酔わしてくれる。酒も飲まないのにわたしはほろよい機嫌だ! 神と道徳の耽溺者は、墓場から地獄に愛そうつかされて、神に酔っ払ってこの世に迷い出て来た!

 棺桶のなかに安眠するものよ出て来い! 繭よ、蛹よ、墓地を噛み破れ! 発明せよ! 爆発せよ! 死の扉を打ち砕け!

 魂よ、白日を仰いで、昇天せよ!
 百萬の太陽を浴びつつ、翼なくして空中に踊れ!
 内なるものが爆発しておるではないか!

                         賀川豊彦
                           神戸貧民窟にて



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