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新連載「賀川豊彦」ぶらり散歩ー作品の序文など(第41回『政治小説・傾ける大地』)

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前回は「賀川豊彦生誕地」の碑をUPしましたが、ここから海を眺めました。賀川の幼年期に思いを馳せながら・・・。





              賀川豊彦」のぶらり散歩
   

               ―作品の序文など―

        第41回

              政治小説 傾ける大地


           昭和3年8日1 金尾文淵堂 411頁


 『政治小説 傾ける大地』は、雑誌『雄弁』(講談社)において昭和2年月から昭和3年5月まで連載された作品で、金尾文淵堂より初めて出版されました。

 箱入りの全布表紙の仕上げで、表紙は「トヨヒコ」の絵が入り、題字と背文字も賀川の手になるものです。また、本書の最初の題字は例の袋文字で描いでいます。


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 本書はのちに、昭和5年11月に「改進書房より、さらに昭和7年には「春陽堂書店」より「春陽堂文庫・大衆小説篇」として刊行されています。因みに、ただいま「Think Kagawa」を検索されると、この小説をUP中ですので、パソコン上でよむことができます。


 小説ですので「序文」がありませんので、ここでは、本書小説の最終のところを少し取り出して置きます。


              *       *



          傾ける大地(410頁~411頁)最後の場面


 『あゝさうだ、地球は二十三度半傾いてゐるのであった。そして人間の慾望もまだ、それにつられて二十三度半傾いてゐる。この変成した人間の欲望が、哀れにも人類社会を、悪虐と迷妄の中に葬り去ってしまふのだ。新しい村もやがては古くなり、改造せられた社会もまた二十三度半傾いてしまふ。それだから永久の道を歩かんとする者は、傾かざる大地の領域外に安住しなければならない。それは傾かざる、恒星の世界に住むことだ。私はその永遠の道を歩く――』

 外套に深く身体を包んだ英世は、寒さも忘れて、さうした瞑想に沈んで行った。

 『俺は世界人として、世界を闊歩する。俺は捉はれざる精神を以て、太平洋を飛び越える。俺は目本の黒土に縛られない。アマソソ河畔に、第二の日本を建設しよう。否、地球は俺の五体の延長だ。この俺の五体の上に巣喰ふものは巣喰へ。小さき町高砂よ、お前は地殻の上にへばり着いて居れ。「預言者は故郷に重んぜられず」とはよく云った。「我父我母とは誰ぞや、神の言葉を聞きて之を行ふ者なり」とキリストは云はれたが、その通りだ。俺は、水遠の神の国の為に、地上の肉親を無視しなければならない』

 彼は橋の上に立ち、家の方に向いて、両手を挙て斯ういふた。

 『さよなら、お父さん! さよなら妹! 私は永遠の国の為に故郷を捨てます。さよなら、さよなら!』

 その晩彼は静かに小屋に這人って寝た。そして翌日彼は、友人の誰にも挨拶しないで、こっそり電車で高砂を立った。その日は砂埃が多かつたので、英世の履いてゐたズボンは脛まで白く埃まみれになった。独り曾根迄歩いた英世は、高いプラツトフオームの上で、ズボンに着いた埃を払ひ落しながら、独言のやうに云ふた。

 『あゝ私も、足の塵を払うて高砂の町を棄てようかな……』

 西の方、高砂の空は、一面砂埃に掩はれて、火と、硫黄と、灰で葬り去られたソドムの空のやうに見えてゐた。

 電車が来た! 英世はそれに飛び乗った。そして、彼の姿は高砂の土地から消え失せてしまった。
               
                                           ――終――


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