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新連載「賀川豊彦」のぶらり散歩ー作品の序文など(第85回『長編小説・颱風は呼吸する』)

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上の写真は、今回も『賀川豊彦写真集・KAGAWA TOYOHIKO』より。



賀川豊彦」のぶらり散歩
   

―作品の序文など―

      第85回

 颱風は呼吸するー長編小説

  昭和12年2月20日 第一書房 288頁


 本書『颱風は呼吸するー長編小説』も前回の『随筆集・黎明を呼び醒ませ』と同様に第一書房より出ています。この「長編小説」はどの雑誌に掲載されていたのか確認できていませんが、ここで収める本書の序文「颱風に備へよー序に換へて」は、昭和12年2月号の『雲の柱』に掲載されています。

 では早速、本書のケースのおもてと本体の表紙、そして扉と序文を収めて置きます。また今回も、武藤富男氏の『賀川豊彦全集ダイジェスト』の本書の「解説」も加えて置きます。



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               颱風に備へよ

                 序に換へて


 人間も呼吸すれば、颱風も呼吸する。悪血を浄化するために、人間は呼吸し、地上を浄化するために、颱風は呼吸する。

 おお颱風は呼吸する! 赤道を北に颱風ぽ呼吸する。烈日は低気圧を作り、熱線は北に動く。然し、熱するものは大気だけではない。人間の血もまた熱する。寒流は北より流れ、低温は南する。悪逆の血の反乱する日、天恩は豊かに人類を育み、罪のいや増すところ、恩(めぐみ)もいや増す。

 日本の上空を通過する低気圧に、東亜は震駭し、大陸の空気ば瞼悪を加へる。

 そも、日本をのみ通過する颱風は、何を意味ずるか? 米の鳥人リンドバアグも日本の北海には、不時着陸し、佛の空の勇者ジャピーも玄海には、その翼をすぼめた。日本列島にのみ、颱風はそのコースを選ぶ!

 台風過ぎて、更に新しき颱風は起り、屋根を飛ばし、家を倒し、船舶を沈め、人畜を傷ける。

 颱風は呼吸するよ! 颱風は! それは時計の針とは反對に螺旋を画いて北に進む。見よ、「通り魔」は、一進一退、根強く呼吸をつづける。かくして、歴史は繰返し、氾濫はつづく。

 然し、その几てを貫いて宇宙意志の標的は変わらない! 罪のいや増す所に、恩(めぐみ)もいや増す。発熟する所に治癒は始まり、痛傷のある所に、恢復も約束せられる。されば南風よ、呂宋(ルソン)島を西北西に吹く風よ! おまへの吹く日に、私は雨戸を閉し、閂(かんぬき)を入れ、屋根瓦を網で蔽ひ、颱風の呼吸するを待たう! やがて、西は白み、乱雲はとぎれ! 太陽は積雲を裂き、また青空が日本に親しむ日がこよう!

 南の測候所の旗は、なんと予報するか?

 秒速二十五メートル、颱風! 中心地、支那海!

 私の霊魂よ! 静かに、慌てすに、台風を迎へる為めに、準備せよ!

    一九三七・一・一八

                             賀 川 豊 彦
                                     武蔵野の森にて



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   武藤富男著『賀川豊彦全集ダイジェスト』の「解説」より(306~308頁)

              『颱風は呼吸する』について


 この書は昭和十二年二月二十日、東京の第一書房から発行された。昭和十二年七月七日に中国事変が勃発したのであるから、その時から五ヶ月前のことである。表題を見、序文を読めば、当時の日米間の雲行き、満洲国建国後の中国の動きが、いかに賀川の心に影響していたかがよくわかる。

 この書には、アメリカにおける日本人の生活と排日的空気とが克明に描写されており、また植民都市上海の状況とそこにおける日本人の生活とがかなりよく描かれている。いずれも賀川が生活し、体験し、あるいは見聞したものを材料としたのであろう。

 この年には第一書房の長谷川己之吉が賀川を高く買っていたと見え、『黎明を呼び醒ませ』『荒野に呼ぶ声』という本もそこから出している。表題がいずれも息づまるような感じを与えているところに、この書との共通性かおる。

 次にあらすじを語ろう。
 関東電機会社の事務員斎藤駿治は、見込まれてアメリカのサンフランシスコの支店に一年間派遣され、見学してくることとなる。彼は新宿のカフェーの女給松代に入れあげたり、悪友に誘われて玉の井に行ったりするが、どうにか誘惑を退けて渡米することになる。

 サンフランシスコのポスト街の米人未亡人の家に下宿した駿治は、そこの娘アンナと仲良くなり、結婚の約束をする。それがわかって未亡人から下宿を追われ、アメリカ人を呪ってついに堕落し、ルンペンになってしまい、日本人移民のごろつき仲間に入る。

 アンナは彼を棄てずに、彼のために祈り、彼の回心を待つ。自動車事故で大怪我をした駿治は、入院してアンナの看護を受け回復する。それから農業移民の成功者で、金持の田代に助けられ、いっしょに日本に帰ることになる。日本人と婚約したアンナはK・K・Kにさらわれてしまう。

 田代とともに船にのった賢治は、船の中でヴァイオリンを弾く青年遠藤光三と知合いになり、また莫大な遺産をもって帰国する未亡人早川千鶴子の鼻血を治してやり仲良くなる。

 帰国した駿治は、千鶴子から出資してもらい、遠藤光三とその妹幸子とともに上海に行って電気器具の商売をやることになる。上海には千鶴子もやってくる。商売は繁昌する。幸子は駿治を恋するが、駿治はアンナとの約束を重んじて幸子の愛を容れない。そのため幸子は中国共産党に入って、中国人と活動を始めるようになる。上海に排日運動か盛んになる。そして上海には便衣隊が出没する。国民党政府は共産党狩りをやる。

 こうした騒ぎの中にアンナが結婚につき母の許可を得て、上海にやってくる。上海に着いたアンナは女子青年会の廻転式階段から落ちて脊椎を打ち不具者となる。しかし駿治はアンナと病室で結婚式をあげ、妻として愛する。

 幸子は中国共産党に入ってつかまり銃殺されるところを駿治が領事館に頼んで助けてもらう。アンナは駿治の店の二階に寝たきりで、手を動かして夫のためにスエーターを編む。また編物をしてはみんなに贈物をする。

 満洲事変が勃発する。抗日ボイコットが起こって駿治の店は苦境に立つ。幸子は再び店を飛び出してしまったが、この頃銃殺されてしまう。

 千鶴子は風邪で寝つき、目が見えなくなって入院する。梅毒による白内障である。亡夫から毒をうつされたのであった。駿治は資金難に苦しむ。アンナの母からの送金があって、苦境を凌ぐ。アンナの親友のミス・クックから百ドルがアンナに送られる。これで千鶴子の入院料を支払う。

 この頃になって駿治が渡米前に入れあげていた女給の松代か梅毒に侵された姿をあらわす。その夫である麻薬売りの河野竹次郎が駿治に対しあばれる。そして松代を保護して病院に入れてやった駿治を領事館に訴えたり、駿治を売国奴呼ばわりをして殺すといって脅したりする。

 この頃上海では便衣隊が出没するので、便衣隊狩りが盛んに行なわれる。幸子の知人であった共産党員の陳栄芳が逃げてきて駿治の家の二階にかくれる。駿治はこれをかくまってやる。このため駿治は嫌疑を受け河野のさし金で、自警団の分隊長のところに連れて行かれ銃殺されることになる。

 河野は自ら銃をとって駿治を狙ったがその銃丸は駿治の頭上を掠めただけで飛去る。アンナが河野の妻に負われて現われる。『シュソジ、あなたはそこで、何してるの?』とアンナがいうと、駿治は『今銃殺されるところだ』と答える。分隊長は駿治と他の七名の支那人を自警団の本部に連れて行く。駿治は陳栄芳のため命乞いをする。駿治と七名とはいずこか連去られる。アンナは毎日、河野の妻に負われて自警団の本部まで夫の安否を尋ねに来る。

 三年たって南京の中山路で、自動車の中に並んでいる駿治とアンナの姿を見た人のあることが伝えられる。



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