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新連載「賀川豊彦」のぶらり散歩ー作品の序文など(第94回M・W・チヤイルヅ著『中庸を行くスヰーデンー世界の模範国』賀川豊彦・嶋田啓一郎共訳)

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今回も上の写真は『賀川豊彦写真集・KAGAWA TOYOHIKO』より。




 賀川豊彦」のぶらり散歩
   

―作品の序文など―

      第94回

 M・W・チヤイルヅ著

中庸を行くスヰーデン―世界の模範国

 賀川豊彦・嶋田啓一郎共訳

  昭和13年11月15日 豊文書店 286頁


 本書『中庸を行くスヰーデン―世界の模範国』は、賀川の意向を受けて嶋田啓一郎が翻訳して雑誌『雲の柱』の昭和13年3月から9月まで連載され、賀川の校閲を経て仕上げられています。この出版社では、前に『女性讃美と母性崇拝』も出しています。

 箱入りの上製本ですが、ここでも本書の箱の表紙、本体の表紙などと共に賀川の「訳者序」を取り出して置きます。



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       M・W・チャールヅ著『中庸を行くスヰーデン―世界の模範国』

             賀川豊彦・嶋田啓一郎共訳


                 訳者序


                  

 何を言ってもスヰーデンで最も驚くことは、犯罪率の非常に少ないことである。刑務所に行く者は、一年間を通じて約千百人であり、(日本は十二萬六千人)殺人犯は十年間平均で約十一人くらゐだと記憶してゐる――一九三一年恐慌時には少し悪かったが――そのためにストックホルムは刑務所を廃したと聞いてゐる。その筈である、妊娠に對しては妊婦保険組合があり、病気に對しては疾病保険組合があり、癈疾に對しては癈疾保険組合があり、老人に對しては養老年金制度があり、死亡に際しては生命保険組合があり、日用必要品は搾取なき消費組合から求め、住宅は搾取を離れたる住宅組合から借り、又世界一立派な生命保険組合が営利を離れて無産階級の生命保険を司ってゐる。それに被服は手工組合で織り、教育は中等程度まで義務制であり、それより以上は、學費の半額まで政府の補助がある。政府は軍備を廃して教育費にそれを使用する。かうしたところに窃盗の必要がない。梅毒患者は実に僅少になり、アルコールの遺傅は少なく、変質者が全くない状態であるために、世界に珍らしい道徳國が出末上つたのである。

 かういふ國では盗棒をすると損をする。僅かばかりの金、五十圓か百圓の金を盗んで、國民としての何萬圓かの権利を失ふことが厭であるからである。実際國民といふものは、生活権と労働権と教育権を保澄してくれるたらば、そんなに多く罪を犯すものではない。

 スヰーデンはルーテル教會一つで殆んど固まつてゐる。その信仰は必ずしも進歩的ではないであらう。しかし、三十年戦争を指導した人々が、スヰーデンから出たくらいであるから、その熱狂的信仰は、チュートン民族のうちでも特異なものである。

                    

 スヰーデンの女は白晳人種のうちで最も世話女房的典型であると言はれてゐる。非常に柔和で温順である。紐育に居る日本人でスヰーデン人と結婚してゐるものが、五百組以上あるとある人が言うてゐたが、スヰーデン人はそれ位、人種を超越して人を愛し得る力を持つてゐる。勿論スヰーデンは数百年館、フィンランドを領有して、蒙古人種と雑婚した過去の経嶮も持ってぬることは事実である。しかし、それらの人々はフィンランドに残ってゐて、スヰーデンには純粋のチュートン民族だけが現存してゐる。

 私は一九三六年の旅行で、スヰーデン人のやさしいことに驚いた。禁酒、廃娼の民族が、このやうに柔和な民族になるのだといふことを始めて知った。

                      

 スヰーデッの芸術は、今日フランス及びアメリカを風靡してゐる。その特徴は建築及び彫刻に顕れれてゐる。スヰーデンの建築は街路に面して屏風形に建ってゐる、その独創的な発明には、私も吃驚した。しかし、光線を得るためにはこれが一番いいのだ、又美的でもある。面白いのは芸術ばかりではたい、自然科學の分野に於てもスヰーデンは大きな貢献をなしつつある。植物學はスヰーデンから始まった。リンネがその創始者である。寒帯農業もスヰーデンが最初研究に手を着けた。寒帯地に於ける小麦の適種を選別したニコルソンの貢献は不滅である。光學に於て光線の波長を測定するのに、アングストロームといふ標準尺度を用ひる、それは一粍の一億分の一を意味してゐる。このアングストロームこそはスヰーデン人の名であって、アングストローム氏の創始したものである。通例「○A」といふ記号を使用して、一アングストロームの記号として使用してゐる。

 然るに最近になって、スヰーデン人ゴールド・シュミツド博士は結晶化學に於て一大発見を遂げた。彼は米國のポーリングと並び称せられる有名たる結晶体の學者である。彼は結晶体内の原子の大きさを測定した。すなわち水素の大きさは一・五Aであり、炭素は〇・七七A、窒素は〇・五三A、酸素は一・四Å等々と明確に測定を完成したのはスヰーデン人であった。

 スヰーデン人ヘデンの中央アジア探検の勇敢なる記録は世人のよく記憶するところである。又近代心霊科學の進歩によって、スヰデンブルグの真価が盆々認められて来た。彼又天才的スヰーデン人である。

 二十世紀の初頭、ノルウェイが、スヰーデンより独立せんとした時、スヰーデン人は喜んでノルウェイに独立を與えた。それでノルウェイの國家は、スヰーデンに對する感謝の言葉から初まってゐる。嘗て国際聯盟に於て、ブラジルが、理事國の一つになりたいと主張して譲らたかった時、スヰーデンは喜んで理事國たる名巻を自から辞退し、ブラジルをそのあとに据ゑだ。スヰーデン人は個人として麗しき道徳をもっているのみならず、国際道徳に於ても世界稀に見る標準を保持してゐる。

 平和二百年、このスヰーデン國は地球の表面に於て最も理想に近い、社會的水準を我々に示してゐると考へざるを得ない。東洋平和の実現に努力してゐる日本は、大にスヰ―デンに學ぶところがなくてはならぬ。この書の翻訳は専ら島田啓一郎氏の努力によったものである。私はたゞこれを原書と照し合せて處々筆を入れたにしか過ぎたい。

 原著は米國の読書界に於て廣く読まれた名著である。幸にして日本に於てもこの名著が廣く読まれるたら此上なき仕合せである。

    昭和十三年十月十三目

                             賀 川 豊 彦




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