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「賀川豊彦」のぶらり散歩ー作品の序文など(第142回『賀川豊彦全集19』第5回配本「月報5」)

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「淡路福良港」(本日のブログ「番町出合いの家」http://plaza.rakuten.co.jp/40223/ )




賀川豊彦」のぶらり散歩
   

―作品の序文など―

      第142回


賀川豊彦全集19』(第5回配本「月報5」)


  
 『賀川豊彦全集』の第5回配本は、昭和38年1月10日に「文学作品(小説)」として分類されている第19巻が刊行されました。

 今回の「月報5」には、「小説家というより詩人―賀川豊彦の文学」と題して関根文之助氏(東洋英和女学院短大教授・文博)、「未曾有の“Made in Japan”」と題して上沢謙二氏(基督教児童文化協会会長)などが寄稿しています。

 いずれも、貴重な文章ですので、前回と同じく箱表紙と本体の扉・写真と共に、月報の前記二つを取り出して置きます。また今回も月報に掲載されている写真も、鮮明ではありませんが取り出してみます。




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          『賀川豊彦全集19』(昭和38年1月「月報5」)

            小説家というより詩人―賀川豊彦の文学

                  関根文之助


 おそらく多くの人びとは、賀川豊彦という人から、「小説」などということは、期待していなかったであろう。ところが、そこへ登場したのが、「死線を越えて」であった。

 白樺派の人道主義は、たしかにふうびしていたが、一面では、多少の臭味を不満足と思っていた人びとも、かなりあったようである。というのは、「死線を越えて」もやはり、人道主義という文学の類型にはいるものであった、それにもかかわらず、絶大な歓迎を受けたという事実を無視することかできないからである。こういう点については、近代文学における一つの新しい課題として、今後の文学研究者に投げかけているものではないだろうか。 

 「キリスト教文学」という名称を、文学史的に固定させうるかどうかについては、なかなか問題があると思うが、もし、そうしたものを設定しうるとしたら、「死線を越えて」の作者賀川豊彦は、すこぶる意欲的なものを感じさせられるひとりだと考える。

 それは、賀川豊彦の「キリスト教文学」のうちには、それの是非論は、もちろんあるとしても、伝道者として、社会事業家としての、かれの熱情をそのまま、文学の形式にもりこもうとしているからである。

 賀川豊彦の本来的なものは、どうも詩人のようである。小説家というより、詩人としてのかれの立場の方が、「キリスト教文学」としては意味が濃いように思われる。

 しかし、これを逆に言えば、そうした詩人だったから、かれの熱情的小説が生まれたとも考えられる。ここで、有島武郎が、「賀川豊彦の作品の題には詩がある。」と評していることばを、もう一度新しく思い起こしてみたいと思うのである。

 賀川豊彦の小説は、いわゆる一般文学史の立場から言えば、やはり人道主義のなかに入れられるであろうし、もし、「……小説」というような言いかたをすれば、「社会小説」あるいは「理想小説」と言うことができるであろう。しかし、「母」「子」などの作者鶴見祐輔などの「理想小説」とは違うように思う。

 そうかと言って、いわゆる社会小説、理想小説でもない。やはり「伝道文書」という性格を内蔵しているところに、大きな特色があるように思う。だから、文壇的に評価されるかどうか、一般の小説家と並べて論じられるかどうか、そこには、おそらく違ったものが存在するであろう。それは、またやむを得ないことであろう。

 また、賀川豊彦の小説は、その意味において、読んですぐに、作品の中核をはあくしうるかどうか、そうしたところに、一般文学史上おいては、他の作家と、かなりの取り扱いが違うように思うのでる。だから、また繰り返すようだが、そこに賀川文学存立の意義が
あのである。

 わたしは、賀川豊彦の詩のうちで、つぎの短いことばに、いつもをひかれる。それは、なにか、このわずかなうちに、かれの文学の本領が、さだかに表現されているように思うからである。

   神は愛だ
   深い愛だ
   こじきの子を抱きしめて
   わたしは言う
   神は愛だ

 こじきの子を抱きしめて、[神は愛だ]と叫びうるこの作者の詩のうちには、全世界をも動かしうる神の愛の力のあることを、明確に歌い得ている。

 これが、賀川文学の本流なのだ。

 わたしは、キリスト教と日本文学とを語るとき、いつも、四人の作家をあげている。すなわち、徳富蘆花、木下尚江、沖野岩三郎、賀川豊彦である。

 日本文学に及ぼしたキリスト教の影響という点からすれば、かなり多くの作家の名をあげることができよう。しかし、信仰と文学という接点にある作家は、そう多くはない。そうしたいみで、わたしは、この四人をあげるのである。

 そして、賀川豊彦といちばんよく以ているのは、「火の柱」「良人の自由」などの作者木下尚江であろう。

 なお、賀川豊彦を世に紹介したのは、じつは、沖野岩三郎であって一九一九年(大正八年)、「雄弁」という雑誌に「日本基督教会の新人と其事業」と題する一文を書き、そのなかにおいて、賀川豊彦と、杉山元治郎とのふたりを、世に広く紹介したのである。
                      〔東洋英和女学院短大教授・文博〕





             未曾有の“Made in Japan”

                   上沢 謙二


 私は賀川先生を知り、賀川先生も私を知って居られた。しかし直接の交際はなかったし、特別の関係は結ばれなかった。けれども何十年間、絶えず先生に見入り、先生を見詰めて過ごした。同じ時代に同じ国で、先生に出会ったことは、そうして離れてはいたが、多少ともつながりていたことは、私に取って、まことに有意義であり、幸いであったと思う。

 先生は、文字通り「稀代」な「稀世」な「稀有」な存在だった。

 正に、当代に稀なる存在であった。が、単に一つの時代だけではない。この現世(うつしよ)において、稀なる存在であった。が、それにとどまらない。人間の中において、稀に有る存在だった。

 万人が万人この世に生きている間は、自分の生活に捉われる。したがって「自分の経済」からぬけ出ることはむずかしい。そのために心配もするし、努力もするし、競争もする。人と人との間のみにくい争いの多くは経済から発するといえるだろう。

 この点は、いわゆる偉人といわれ、豪傑といわれ、権力者といわれ、大学者といわれる人も、凡人、平常人と、大凡おなじである。中にはそれ以上に祝着する向もある。

 賀川先生はまったくこれを超越したといえよう。先生の許に集まる印税や、謝礼や、献金は、巨額なものがあったろう。しかしけっしてこれを自分のポケットにしまいこまなかった。時に応じ、事にしたがって、右から左へと散らした。先生の小切手帳は自分のためでない、他人のために書かれたといえよう。

 しかしそこにはただ一つのきびしい条件があった。「神の国のため」というそれである。まことに先生は「自我経済を超越した神の国経済人」ともいうべきだろう。

 一つの教会または施設を建てるのはたいへんな仕事である。このために全能力を費やし、一生をささげる人さえある。それは実に聖い、尊とい。

 ところが、賀川先生は陰に陽に、幾つかの教会または施設の建設の中心または先駆に立った。そのあらわれとして。賀川先生の名を連ねた教会乃至施設が、いかに多かったか。それか成立し実現すると、先生は他の人に明け渡して、また別な計画と組織にたずさわって倦むことを知らなかった。まことに先生は「自己教会施殼の建設を跳躍した神の国建設者」ともいうべきだろう。

 「賀川先生は神学がない」といわれるとか聞く。

 私はその方面はまったくの素人なので何ともいえないが、先生の興味、関心、熱意、研究の広さは、神学の範囲だけにとどまっていなかったのだと思う。科学、文学、哲学の世界にまでひろがらないではいなかったのだと思う。それは何よりも今回出版される全集の内容が証明している。

 これほど広汎なしかもそれぞれにおいて組織立った研究と、自然の披巧と、しかも熱烈な信仰が融合して生み出された著述は、少ないのではないかと思う。まことに先生は「自家神学を突破した神の国哲学者」ともいうべきだろう。

 戦後、先生は、精神生活指導のため、芙米へ招聘された。実に未曾有の生きた“Made in Japan”である。

 私は「百三人の賀川豊彦伝」の中で、先生がノーベル賞を受けても受けなくてもよい。何よりもキリスト賞受賞者だと書いたが、わが国からも湯川博士がそれを受け、谷崎氏その他が噂さにのぼるのを聞くと、いかにも残念であり、いささか不満でもある。その残念と不満をどこへもっていいかわからないのだが。
                         〔基督教児童文化協会会長・鹿沼幼稚園園長〕





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