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「賀川豊彦」のぶらり散歩ー作品の序文など(第187回:『高山徳太詩集・花のように』賀川豊彦「あとがき」)

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「兵庫・真浄禅寺」(今日のブログ「番町出合いの家」http://plaza.rakuten.co.jp/40223/)


賀川豊彦」のぶらり散歩
   

―作品の序文など―

      第187回


高山徳太著・賀川豊彦あとがき『花のように―高山徳太詩集

  
 標記の詩集については、すでに「KAGAWA・GALAXY 吉田源治郎・幸の世界」の連載の折りに何度か取り上げてきましたので、そちらをご覧いただくとして、ここではただ、賀川豊彦のあとがき「ある新聞記者との対談」を取り出して置きます。



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  『花のように 高山徳太詩集』(世界文学社、昭和23年8月)あとがき

               ある新聞記者との對談

                  賀川豊彦
   
           所 京都府下奮長岡皇居跡  時 四月六日 桜さくころ


                  児童の感覚と自然

記者 「毎日新聞紙上で、あなたの経営せられている一麦保育園出身の高山徳太君の『詩』と自筆の挿画を発表しましたところ、非常に反響がありましてね。こんど世界文学社が出版してやろうといって下さるものですから、徳太君のお母さんとも相談していよいよ出版することになりました。ついてはあなたにI言感想を書いていただきたいのです」
    
 「それはどうも有難うございます。あの子は親孝行の息子でしてね。画もなかなかうまいですよ。この間宮沢賢洽氏の童話の挿書を紙芝居に描いたものを見せて貰いましたが、全く感心しましたよ。心理的描寫が実によくできてたので、これは感覚の鋭い子供でなければかけぬと思いましたね。大人になるとどうも敏感な感覚がにぶれて、高山徳太君が持っているような、いきいきした大地からすぐ芽をふさ出したような鋭い感覚がにぶれて来るようですね。」

記者 「徳太君の絵を見ると、自然のことがよく出て来ますね。又、詩をよんでも我々が感じないような自然の観察をよくしておりますね。それはあなたの保育園でうけに感化だって、本人もお母さんもいうていますが、あなたはどんな教育をなさったのですか?」

 「別に私がしたわけではなくて、私の方針にもとづいて埴生操先生がこつこつやってくださったんですよ。埴生さんは子供らに雑草を教えたり、昆虫を教えおしえる点においては、恐らく関西一のいい先生でしょうなァ。とにかくこつこつ辛抱づよくやる人ですから、あんな先生に教わる保育園の子供は仕合せですよ。教場は野原と小溝で、教科書は草木と自然界に動いている小動物其物ですからね。子供らは幸福ですよ。」

記者 「うちの子供も少しおうちの保育園に世話になっていたんですが、雑草園をつくるとといって、野原から色々役にたたない植物をとって来て植えていたのを、私か葱を植えようと思って、みんな引きぬいてしまったら、子供が、『私のかわいいかわいい草を抜いちゃって困ちゃったわ』と泣くようにいうていました。子供らは特別な感覚をもって野原の草花を愛するものと見えますね。」 

                   自 然 教 案

 「あなたは葱さえ植えればよいと思っていらっしゃるでしょうが、うちの保育園では埴生先生が苦心して子供らに食える野原の雑草を幾十種類も教えていらっやるのです。それで子供さんは恐らくそれらの雑草を植えておけば食えると思っで――葱以上に値打ちのあるものとして庭に植えたのでしょうね。私たちの方針は子供らに植物を教える場合に、目、ロ、鼻、耳、手、の五つの方面から教え込むようにしているんです。目でよく見て、鼻でその植物の匂をかぎ、手でさわり、口で味い、そこの植物のことを歌でうたうようにして、五感の凡ての方面からその雑草のもつ特徴を教え込むようにしているんです。

 こんな教育は幼稚園時代でなければ、できないことで、小學校や中學校のように、四十五分や一時間のうちに鐘が鳴っては表に出、自然観察も何もしないで、教室を出たりはいったりしているばかりでは、うちの保育園のような面白い教育はできません。私はフランスのファーブル先生がかいて下さった「昆虫記」を地でゆきたいと思って埴生先生に頼んで、木蜂(ワスプ)の研究をする時などは、四時間でも五時間でも、或は次の日も、叉次の日も、その叉次の日も木蜂が巣を作る観察をして貰っているのです。小學校では、こんなのんびりした教育は絶對に出来ません。私は私自身が阿波の田舎の自然の中で一人育つたものですから幼稚園時代にうんと自然を子供に吸い込ましてやりたいと思っているのです。自然を離れて絶對に宗教教育は出来ないと私は思っているのです。

 残念ながら文部省の発表している教育の基本原理などを見ても、幼稚園時代の自然観察の重要性を全く無覗しているようです。しかし私の考えでは、幼稚園時代の子供ほど感覚の鋭いものはなく、幼稚園時代の子供ほど目然に溶けこみやすい幸福な時代はないと思うのです。」

記者 「そうですね。僕らは自然というものを知りませんね。ですから徳太君のような自然と親しく交わっている子供らを見ると、羨しくてたまりませんよ。この間も徳太君の家にゆくと、兎と問答しているじゃありませか!

『おい兎君、あすはコンクールだぞ、ぼくのためにお祈りしてくれよ。うまく行ったらお前に人參をうんと喰わしてやるから』といっているじゃありませんか? 徳太君はこんどの唱歌のコンクールに入選しまして、唱歌も仲々うまいということが解りましたが、めすらしい子ですね。

 ずっと前にも、とんぼの幼虫を鉢の中でかっていて、それがだんだん発生して水の中から羽根を生して空中に飛び立つのを見ていましたよ。私か徳太君の家を訪問するとお母さんと徳太君とが『さあとんぼさん、もう表へ行って遊んでいらっしゃい』といいながら戸をあけて、あちらこちらにとまっている幼虫からかえった羽根の生えたとんぼを、五ひきも六ひきも表に逃がしているではありませんか。羨しいと思いましたね………。あゝした教育はあなたのやっていられる保育園の特徴でしょうね。外に余り聞いたことがありませんから。」

              幼稚園は小學校の準備ではない

 「そうかも知れませんね。私は幼稚園を小學校の準備数育と思っていないのです。幼稚園は幼稚園の使命があって、子供らは自然の生活を先生から指導せられながら、もっとも幸福になすべきだと思っているのです。つまり子供心が自然の中に溶け込んでゆけば、それほど子供らにとって幸福なことはないのです。私はリトミックダンスも賛成ですし、和音感教育も大賛成なんです。一麦保育園では吉田幸子女史が、その方を受持っていて下さいます。しかし私はそうした文化教育は主として自然教案の間間にはさんでゆくようにして貰っているのです。西宮の瓦木村では小溝の流れは美しいし、其の近くには鎮守の美しい森もあるし、先生が四季とりどりの植物、昆虫について日課をきめ、子供らの注意力を一点に集中させ、教育學的に児童の心理的発展に応じて、自然教案を組立てゝゆくようにして貰っているのです。埴生先生は『母子草』のことを教えるのに紙芝居まで面白くつくって、上手に教えているんです。

               自然と宗教と詩の調和

 この自然教案が埴生さんを助けて私の方の保育園の保母をしていた徳太さんのお母さんにうつって行ったんです。――あのお母さんは東京女子医学専問學校に勉強していたような賢い人ですから、すぐ自然教案を呑み込んで徳太君にも家庭で自然教案を教えるふうにしていられたらしいんです。徳太君の作品に、自然と宗教の感覚が本然的にとけ合っているのもそのためです。大地から湧いたような美しい童謡調になって、作詩せられているのは、リトミックの調子と宗教的自然観とが一致したからでしょう。徳太君の作品は、あれだけで児童文學として、私は物になっていると思っています。出来れば友人の作曲家に作曲して貰って、私達の保育園や幼稚園で唱えばよいと思っているのです。徳太君のお父さんは肺病で徳太君がまだ幼い時になくなつてしまったもんだから、お母さんは徳太君一人を抱いて一麦保育園の保母になられたのです。ですから徳太君はお母さんに對する感謝で、いつも胸がI杯なんです。徳太君の詩をよむとそれがよくわかります。」

記者 「徳太君はこんど闘西学院の中學部に入學しました。これから勉強して立派な人物になって貰いたいものです。慢心されるとこまりますが、あの詩と絵とは立派なものですから、出版することに世界文学社の方でしてくれたことを私はうれしく思っています。」

 「ほんとに才能を持っているものを慢心さすと困ります。その点は注意しなければなりません。が、あの雑記帖にかいた詩集は、あれだけで充分物になっていますから、葬り去るのは惜しいです。あれだけで天下に紹介されてよい立派な作品だと思っています。とにかかく満十歳や十一歳の頃に作ったものと思えない純真なものがありますから、あれはあれとして、是非発表していただきたいものです。」

記者 「日本全体に早くおうちの保育園で行われているような自然教案が行われるとよいですね。皆今日では教育の方針について迷っていますからね。』

 「今度児童福祉法も出来ましたし、みんな子供のことを心配している時ですから、徳太君のような少年の作品を発表することは、意義のあることですね。一麦保育園からある程度教育の効果を表してくれに作品が出ることをほんとに喜んでいます。」



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