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村島帰之の労働運動昔ばなし(第103回)

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「寒中散歩:西山公園」(今日のブログ「番町出合いの家」http://plaza.rakuten.co.jp/40223/)



村島帰之の労働運動昔ばなし(103

『労働研究』(第168号)1962年連載分


     第十四回 日本最初の労働劇団
             

           レジャーの楽園新開地


 大正8年8月、川崎造船所怠業事件が解決し、いわゆる「8時間労働制」の実施を見るまでは大体10時間の定時労働の上に平均2時間の残業をして、平均11時間59分(大正8年5月現在)という長い実働時間だったので、レジャーをたのしむというようなことはほとんどなかった。それがサボタージュ以後、時間の短縮により、基準の8時間の上に平均2時間の残業をして1日の就業時間は9時間55分(大正9年5月現在)に減じた。そして出勤率もサボ以前の82パーセントから86パーセントに上昇し、賃金も以前は1人当り工賃1円92銭4厘だったのが、就業時間減少にもかかわらず2円62銭8厘と却って70銭増加して職工さんおよびその家族は大喜びだった。

 こういうわけで、職工さんの拘束時聞が減りからだも楽になり、それに心理的な解放感も加わってレジャーを楽しもうという余裕が出て来た。しかし、レジャーとはいっても、今日のように、旅行や登山に出かけるというほどのことはなく、せいぜい新開地の盛り場をぶらついて映画や芝居を見たり、安直な飲食をするというぐらいがせいぜいだった。

 当時、神戸の盛り場といえば「新開地」界隈にきまっていた。南北わずか5丁か6丁のいわばネコのひたいぐらいのせまい地域だが、そこには、あらゆるレジャーをたのしむ大衆向の施設が揃っていた。私は大毎神戸支局を去って大阪本社勤務に転ずる間ぎわに、約1ヵ月にわたって「新開地界隈」と題する続きものを新聞に連載し、この民衆娯楽の楽園の内容と外観を解剖した。(のちに久留弘三らの神戸印刷工組合の自営工場から出版された)それにはこう書いている。

 湊川の水は枯れる時があっても、わが新開地に人通りの絶えることはあるまい。朝まだき頃1万人を超える川崎造船所の職工さんが此処を通過し始めてから、深更、松尾稲荷ヘハダシ詣でをする芸者や仲居がアスファルトの上をカケハダシでゆききする頃まで、人影の此処に絶えることはない。湊川署の巡査が聚楽館前に立って調べた処によると、午後3時から4時までの1時間に新開地を北へ上った者2、250人、南下した者2、125人、計4、375人。さらにこれが夜ともなると人出の数はグンとふえて、午後8時から9時までの1時間の通行者は4、895人で、1分間に82人。時計がコチッと秒を刻む毎に1人半づつが通る勘定であった。

 新開地の東側には小さな飲食店などが約70軒、目白押しに並んで客を呼び、西側には北から数えて中央劇場、聚楽館の二大劇場を始め神戸劇場(手踊り)、千代の座(話専門)、キネマ倶楽部(映画)、錦座(同)、大正座(浪花節)、多聞座(安来節)、松本座(女義太夫)、菊水館(映画)、第一第二朝日館(同)、湊座と13の映画館や芝居小屋がひしめきあっていた。余暇を楽しもうとする川崎の職工とその家族は「どこにしようかいな」と戸惑うばかり。入場料は大衆席の3等なら芝居の中央劇場と聚楽館は別格で大体50銭だが他の映画館などは20銭乃至30銭(キネマ倶楽部と第一朝日館はやや高級で40銭)どこも大衆席は職工さんたちであふれるほどの大入り。

 飲食店も聚楽館の向い角の桂喜や博高館の隣りのヤッコは別として、他は「早幕35銭」「卵入りライスカレ-20銭」と大書した看板を掲げ、牛どん8銭、めし10銭、酒13銭と安直第一の大衆食堂ばかり。その中に1軒洋風2階建の洋食店が目立つが、これはカフェー、ナンヨーといって、友愛会の集会にもたびたび使われた。大正8年7月、野阪参三氏(当時は友愛会編集部員)が英国へ旅立った時も、また9年6月、私か大阪本社へ転勤した時も、友愛会の諸君が此処で送別会を開いてくれた。

     (つづく)


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