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村島帰之の労働運動昔ばなし(第106回)

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「神戸長田・苅藻川沿いの古木」(今日のブログ「番町出合いの家」http://plaza.rakuten.co.jp/40223/




村島帰之の労働運動昔ばなし(106

『労働研究』(第168号)1962年連載分

     第十四回 日本最初の労働劇団
             
     (前回の続き) 

                神戸劇場での初公演


 稽古は造船所の仕事が終ってから神戸の山手のある家で毎夜のように行われた。私は久留と一しょに2、3回その稽古を見に行ったが、男女優とも熱心そのものだった。そして大正9年春、荒田町の小さな小屋で試演をした後、同年5月10日から3日間、新開地の神戸劇場(聚楽館の南向い、小料理屋の横の引っこんだ処にあった)で華々しく開演した。客は階上階下ともギッシリで、大部分が造船所の職工さんだった。出しものは悲劇「文明のたまもの」五場、喜劇「労か資か」二場、喜劇「木綿実行」一幕で、みな労働者の日常茶飯事を扱かったもの。その上、小道具には金旋盤やフライス盤を運んで来て、舞台でそれを運転した。何しろ本モノの職工さんが、本モノの機械を動かすのだから真に迫らなければウソだ。それを見て観客はワーツワーツと大さわぎである。「しっかりやりやー」「削りすぎたらあかんでエ」と大向うからの声援でセリフもよく聞きとれないぐらい。舞台と観客席が一体となって芝居をしているのだった。

 こうして興奮と怒号、叫喚のうちに、芝居の幕はおりた。演技の上手下手は問題でない。みんな満ち足りた思いで劇場外に吐き出されると、新開地の人波の中へ吸い込まれて行った。

 労働者による、労働者のための労働者劇(リッカーツの言葉の受け売りだが)は、こうして大好評の裡に神戸の初演を打ちあげ、それからは加古川、姫路などを持ってまわった。労働劇のドサ廻りが始まったのである。

 しかし、始めは純粋な気持でやり出した労働劇だったが、だんだん時間がたつにつれて、技芸員(役者とはいわなかった)の諸君が色気を出し始めて、いわゆる役者かたぎが露呈して来た。

 これは技芸員だけのせいではなく、周囲の人たちにも責任があった。たとえば、神戸劇場の初公演の時でも、楽屋へ行って見ると、はなやかな楽屋座蒲団が贈られて来ていて、壁面には「何某さんへ、何某より」といった紙片が貼ってあった。これでは場末を興行して廻る三流の芝居と異るところがない。私はもう少し真剣味がほしいと思ったが、いい気持でやっている人たちにケチをつけては相済まぬと思って口をつぐんだ。

 此処で私は労働劇団の設立趣意書を取出してみる。これはリーダーの丹崎氏の筆ではなく、久留氏のような気がする。


              日本労働劇団趣意書

 私どもはこれまで労働運動を宣伝せしむる手段として演説会や示威運動の方法を採って居りましたが、今回さらに「耳よりも目から」「理性よりも感情に」訴えて運動を試みようとの希望から、生活問題や労働問題を取扱った劇を上場しようとして、同志相依って此処に「日本労働劇団」を組織するに至った次第であります。俳優はいずれも毎日ハンマーやヤスリをもって工場に働いている労働者であります。芸は素より未熟でありますが、労働心理を確実に表現する上においては、敢えて玄人にヒケをとらぬ自信だけはあります。何卒大方諸彦の真面目なる御指導と御引立のほどを呉々も御願い申上げます。
 大正九年三月
                 日本労働劇団
                         発起者 丹 崎   勉

           規     約

1.本団は日本労働劇団と称す
1. 本団は演劇の形式に依りて文化運動の促進を期するものとす
1.本団の資金は大方の寄附金及び会員の会費を以てこれに充つ(下略)

           役     員

総監督 久留弘三
願 問 今井嘉幸  賀川豊彦  村島帰之
工場長 久我米松

               技 芸 員

池沢清     間正 太郎   西川桂     川島 拾月
川田薫     河上  実   武田明敏    多賀美良夫
籤下利男    山内染之助   松本豊一    福永 酔月
藤田仙哉    鉄山  昇   浅田誠志    安岡 綾子
小林清子    横井春子    頼安正子    小林伊音子
大林幾子    
丹崎勉(主事)   中井 三郎(舞台監督)
徳田紫成    藤田 紫影(脚色)

    (つづく)


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