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連載:賀川豊彦の著作ー序文など(第44回)

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「片山津温泉<加賀之井>」(今日のブログ「番町出合いの家」http://plaza.rakuten.co.jp/40223/)



   賀川豊彦の著作―序文など

       わが蔵書棚より刊行順に並べる
 
                第44回


        殉教の血を承継ぐもの

          昭和4年5日1日 日曜世界社 172頁

 前回取り出した『聖浄と歓喜』に続いてこれも、賀川豊彦の講演筆記を個人誌『雲の柱』に掲載されたものが殆どです。今井よね・吉田源治郎・吉本健子の筆記をもとに仕上げられています。



           序

     聖パウロは云った。
     『其身を活ける供物として神に捧げよ』と。

     五尺の鯉を、神に祀ることは最も愉快なことである。
     我々の生活の凡てが、神への供物であり祭りであるのだ。

     祭りだ! 祭りだ! 
     あれ、花火が上がり、楽隊が聞こえるではないか。

     我々の生涯のあらゆる瞬間が神への祭りだ! 
     表に五色の旗が翻らなくとも、魂の奥には、永遠の薫香が立ち昇る!

     神への燔祭は我らの赤き血そのものである。
     若き小羊を捕えて神に捧げよ。

     神への捧伽は、我々の生命そのものであらねばならない。
     我々の玉串は、生霊そのものであらねばならぬ。

     完全に我々の全生命を神に祀らうではないか。
     我々の肉体、我々の生活、我々の精紳、我々の學問、我々の芸術、
     そして我々のあらゆる道徳を、神への捧げ物として、
     八足台に捧げようではないか。

     永久の祭りだ、永久の歓楽だ! 
     不滅の花火、無限の祝典、生命の神饌は、永劫に尽くべくもない。

     私に両国の花火はなくとも、私の心臓のうちには、
     不滅の血が、花火以上に赤く爆発する。

     凡てが神への装飾であり、七五三飾りであり、
     凡てが神への芸術である。私の一生はお正月の連続である。

     お祭り気分の私は、無声の聲の音楽に、地球の表面を踊り続ける。
     おめでたう! おめでたう! 永遠におめでたう。

     私はおめでたうを九度繰り返して、キリスト山上の垂訓の九福を回想し、
     十度おめでたうを繰り返した。

     私は万物に勝った、神の福祉に浸って居ることを、直感する。
     『新郎と共に居る間、我々は悲しむことが出来ない』と
     イエスは云はれたが、歓楽の声は魂の内側に充ちて居る。

     カルバリーの最後がどれ程暗黒に見えても、
     神への道は永久に開かれてゐる。

     花火を上けるものは、煙硝を惜んではならない。
     十字架上で流す血は、例へば、
     天に打ち上けられる花火の火薬のやうなものだ。

     その量が多ければ多い程、天に飛び上る爆発力が強い。
     花火を打ち上けよ。

     今日は生命の祭の日だ! 光栄よ、光栄よ、
     萬物は皆歓呼を上けて神の栄光をたゝへ、
     物として神の稜威(みいつ)を賞めないものはない。

     野辺の鳥も、竈(かまど)の下の火も、押入の砂糖の塊も、
     火鉢も、鐡瓶も、原稿用紙も、水苔も、
     人間の垢までが神の栄光を拝してゐる。

     捧げてしまへよ、友よ、私の魂よ、
     君の持てる凡ての物を神に祭ってしまへ。

     その昔イエスが凡てを十字架を通してまつられし如く、
     凡てをまつってしまへ! 

     金銭も、財実も、地位も、名誉も、生命も、魂も、
     惜しげなく神の前にまつれ! 

     今日は、本祭りの日だ! 
     あれ太鼓が聞こえ、笛の音が聞こえる。
     神への祭りは、地上のあらゆる情欲にも勝って感激に満ち、
     生命の神楽は人間のあらゆる快楽に勝って、我々を昂奮せしめる。

     神の甘酒を呑み始めて以来、私は地上のあらゆるものに
     神の御姿を拝するやうになった。

     凡ては神の思し召しに依ってなり、
     凡ては神の恩寵に依って歓呼する。

     有り難い、ありがたい、私は神の前に捧げられた子羊として
     黙々と祭壇の前に屠られる。

     おお、屠り給へ主よ、
     このみすぼらしい子羊が
     あなたの祭壇の芳しき香りとなって
     天にまで送らるる喜びとなるなら、
     私は今日の屠らるる日を一生の光栄の日として
     あなたを讃美します。

     あゝ、永遠の祭り、永劫の饗宴、
     神の最も嬉しき祝典、無限の歓喜よ、
     私は自らを神に捧げることに依って、
     神そのものに帰り行く光栄を担ふ。

     昇れよ燔祭の煙、血ぬれよ祭壇の四隅の角を、
     人類は凡て神のものだ。我々の血は凡て神に帰すべきものだ。
     神は永久の祭りとして我々の生命と憐れみを要求し給ふ。

      一九二九、二、二〇
 
              賀  川  豊  彦

                  摂津武庫川のほとりにて



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