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連載:賀川豊彦の著作ー序文など(第83回)

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「ぶらり<会下山公園>」(今日のブログ「番町出合の家」http://plaza.rakuten.co.jp/40223/)


  賀川豊彦の著作―序文など

     わが蔵書棚より刊行順に並べる
    
             第83回

  
   『BROTHERHOOD ECONOMICS』

      昭和11(1936)年  Harper&Brothers

 1936年にアメリカのHarper&Brothersで出版され、翌1937年にはイギリスでも刊行された本書『BROTHERHOOD ECONOMICS』は、2009年6月に、日本生活協同組合連合会出版部において、加山久夫・石部公男共訳・野尻武敏監修として邦訳されました。

 ここでは邦訳された賀川の「序文」を収めます。そして参考までに加山久夫氏の「訳者あとがき」もUPして置きます。



   『BROTHERHOOD ECONOMICS』

           序 文

 「わたしに向かって、『主よ、主よ』と言う者が皆天の国に入るわけではない。わたしの天の父の御心を行なう者だけが入るのである」。 20世紀の今日、私はいま改めてこのイエスの言葉に思いをめぐらしている。

 今日ほど、キリストの教えが挑戦を受けている時代はかつてなかった。もし教会が社会において愛を実践しようとするのであれば、その存在理由はあるだろう。私は、信条だけで世界を救い得るとは考えない。信条が重要でないというのではなく、信条や教義とともに、社会での贖罪愛の適用が必要なのである。

 今日、資本主義は、漁に出かける漁師のようなものである。漁師は棹や餌を準備しているが、魚はかれら自身の考えを持っているのである。漁師と魚の内なる目的の間には一致ではなく、むしろ対立がある。新しい時代には、私たちは需要と供給という、本来あい伴っていくべき二つの、この不自然な矛盾を解決しなければならない。生産者と消費者の間の溝を兄弟愛をもって架橋しなければならない。さもなければ、社会は決して救われず、不況、恐慌、失業がいつまでも続くことになる。

 相対性や量子力学の理論は19世紀の物質概念を完全に放棄し、固定的な決定論を可能性の世界へと転換させた。かくして、20世紀には、物質主義的資本主義と物質主義的共産主義は共に放棄されなければならないのである。

 私は、本書において、心理的ないし意識的な経済を通して新しい社会秩序に至る新たな道を見出そうと試みた。

 本書は、1936年4月、コールゲイト・ロチェスター神学校のラウシェンブッシュ基金の招きで「キリスト教的友愛と経済再建」という表題のもとに4回にわたって行なった講演を収録したものである。

 本書の初稿は米国に向かう太平洋上で執筆した。もし鈴木荘介氏が荒れる航海の途上で助けてくださらなければ、本書の執筆を終えることはできなかったかもしれない。最初に日本語で執筆した原稿を日本に送り、ジェッシー・M・トラウト嬢と小川清澄牧師に英訳の労をとっていただいた。

 さらに、コールゲイト・ロチェスター神学校、アンドヴァー・ニュートン神学校およびシカゴ神学校の数名の学生諸君が英文原稿の表現を検討してくれた。その後、多年にわたり私の助手を務めてくれているヘレン・F.タッピング嬢、国際宣教会議の秘書であるエスター・ストロング、ラウシェンブッシュ講演委員会委員長のアール・B・クロス教授らのご好意により、幾分か拡大され、形も整えられた。本書の出版のためにご助力くださったこれらの友人たちに心からの謝意を表したい。

           賀川 豊彦
                 




     訳者あとがき

 1935年12月、賀川豊彦は、経済恐慌からの復興のためにニューディール政策を推進中であったルーズベルト政府から招かれ、協同組合運動の指導者として全米講演の旅に出かけた。この多忙な講演旅行中のもう一一つの目的は、ニューヨークのコールゲイト・ロチェスター神学校でのラウシェンブッシュ記念講演であった。

 キリスト教の社会的使命を掲げる「社会的福音」で世界的に著名なウォルター・ラウシェンブッシュを記念するこの講演には、やはり世界的に著名な人士が招かれ、その講演は刊行される慣例となっていた。賀川の講演がbritherhood Economics(Harper&Brothers、1936)として出版されることが予告されるやいなや、3、000部の予約が出版社に殺到し、広く読者の関心を集め、その後、世界的に多くの言語に翻訳され刊行された。

 カナダ、イギリス、スコットランド、フランス、中国、オランダ、スウェーデン、ルクセンブルク、デンマーク、ノルウェー、ウェールズ、アンドラ、イタリア、スイス、ベルギー、リヒテンシュタイン、リトアニア、エストニア、ラトビア、ポーランド、サンマリノ、トルコ、ユーゴスラビア、オーストリア(ドイツ語およびエスペラント語)、ドイツなど25力国、17言語で出版されている。

 当時、米国発の金融恐慌で苦しむ世界において、キリスト教的兄弟愛に基づく人類社会の新秩序樹立への提言がどれほど多くの人々の関心と共感を呼んだか、よく窺われる。

 ところが、残念なことに、日本語では出版されず、話題にもならないままとなった。

 因みに、1978年、当時EC(現在のEU)の議長であったE.コロンボ(イタリア外相)が日本の国会に招かれた際、事前に国会に宛てたメッセージの中で、「競争的経済は、国際経済の協調と協力を伴ってこそ、賀川豊彦の唱えた『友愛の経済』への方向に進むことが出来るのである」と述べている。しかし、どれだけの国会関係者が、賀川の唱えていた「友愛の経済」について知っていたのであろうか。

 もっとも、賀川豊彦が渡米船上で執筆した元の原稿は『キリスト教兄弟愛と経済改造』として、ただちに『雲の柱』誌に連載されている(1936年3月~6月)。(『賀川豊彦全集』11巻に所収。)しかし、本として出版されたものは増補、編纂され、書名も変わっている。また、『雲の柱』誌は賀川の個人誌の趣があり、読者層も限られていたので、この時も、その後も、残念ながら、広く話題とされることにならなかった。

 賀川豊彦の思想や社会活動についての紹介や本書の意義については、監修者により行き届いた紹介がなされているので割愛する。

 本書は、米国での講演であり、しかも、キリスト教の背景をもつ聴衆に語られたものであるので、その点で多少の違和感があるかも知れない。また、なにぶん70年前の講演であり、時間的距離もある。しかし、本書が提言し、目指しているものには、時代や状況を越えた普遍性があると思う。

 しかも、本書が出版された1936年は、すでに述べたように、経済恐慌の荒波に翻弄されていた時代であり、現在の状況と大きく重なっている。賀川がある意味で共感しつつも、厳しく批判した社会主義体制が崩壊し、独り勝ちしたかに見えた資本主義体制も行き詰まりつつあるいま、第3の道が求められている。その意味で、本書のメッセージは、今だからこそ正しく読まれ、理解され得るものがある、とも言えよう。

 この度、賀川豊彦獣身100年記念事業の一つとして、ぜひ本書の邦訳出版をと思い立ち、石部公男教授(聖学院大学)と共訳し、野尻武敏先生(神戸大学名誉教授)に監修をお願いした。野尻先生は訳稿全体を原著とつき合わせ詳細に手を加え、事実上、監訳者の労をとってくださった。

 厳しい出版事情の中、コープ出版が本書を刊行して下さった。日本生活協同組合連合会の関係者の方々に心から感謝申し上げたい。

読者諸賢が、閉塞状態にある現代の状況において、本書からひとすじの光を見出し、さらに未来への希望の道を切り開くことに寄与することができるなら、望外のよろこびである。

 なお、原文中、現在では不適切と思われる表現や明らかに事実誤認と思われる記述は部分的に手を加えたが、なるべく原文を尊重した。この旨諒解していただけると幸いである。

                 加山久夫

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