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連載:賀川豊彦の著作ー序文など(第89回)

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「城崎温泉のさくら」(今日のブログ「番町出合いの家」http://plaza.rakuten.co.jp/40223/)


   賀川豊彦の著作―序文など

      わが蔵書棚より刊行順に並べる
 
              第89回



     『女性賛美と母性崇拝』

          昭和12年6月28日 豊文書院 431頁

 本書『女性賛美と母性崇拝』は、豊文書院という恐らく初めての出版社と思われるところより出ています。この出版社と賀川はどのような関係をもっていたのか、これ以後、ここからどのような作品が登場したのかも未確認ですが、本書は立派な上製本で、本書の発売所は別にあって「慶文堂書店」となっています。

 ここでも序とともに武藤富男氏の『賀川豊彦全集ダイジェスト』の「解説」を取り出して置きます。



      女性讃美と母性崇拝

          序

 もう斯うなっては、女性の再生力を待つ外人類に望はなくなった。

 神が、人類を創造しだのは相剋を目的とするためではなかつた筈だ。恥しいことだが、今や人間は殺し合ひすることの外興奮を感じなくたってしまった。人類は猿より進化したといふが、擬人猿類には大砲もなければ、爆撃機も無い。人類が猿より進化したなら、もう少し上等な文明を持つべき筈だ。今の形の文明は悪鬼より人類が相続したのだ。

 呼、今になっては、女性の優れた道徳的保存力と、その柔和と、謙譲と、母性愛にすがるより、人類更生の途はない……。

 蜂と蟻は、女性の集団によって王国を建設してゐる。その支配者は母性であり、その勤労者は女子ばかりであり、男性は交尾の後は全部除去される。

 何故に蜂の国家と、蟻の社会は、雄を生殖作能の後に之を死刑に処するか? 私はこの解答を人類社会に於て見る。雄性は相剋を喜び、戦争の外に興奮を感じないからであらう。男性は性能を遊戯化し、女性を娼性化する傾向かあるからではなからうか?

 兎に角、昆虫社会では、婦性の権限を男性の上に置き、母性の力に依って社会を統括してゐる。人類は、昆虫に学ぶ可きである。

 私は、もう人類相剋の狂気沙汰に飽いた。宇宙にはまだ開拓されでゐない処が無限にあるのに、何故、人類は相剋のために最大のエネルギーを使ひ、その青春をこのために浪費するであらうか?

 桜は美しく笑ひ、薔薇は香しき匂を放つに、これらの植物にも劣りて、人類が斯く醜くあらねばならぬ理由は、何処にあるであらうか? 純真さを失つた人心は、醜さをさへ理想とし、犬儒哲学者は汚衣を誇り、修行者は美の一切を否定することをすら得意とする。而して斯く歪められたる人心は、凡てを相剋のために犠牲にせんとする。

 戦争のために科学は卑怯になり、人類相剋のために、芸術は歪められ、道徳は不具者となり、絶対の道はかくれ、至聖者の彫は見失はれてしまった。

 かうして、贖罪愛は嘲られ、聖者は石打たれ、廿世紀の今日、電気文明の名によって、軍神マーズは宇宙創造者の名の上に置かれる時代となった。

 憂鬱の子として生まれ私は、欧州大戦に発狂しさうになったが、二十世紀の暗黒に、人類の痴呆症に、植物に生れてきた方が、余程増しであつたように思ふ。

 創世記は、最初の女エバの堕落を書いてゐうが、私に創世記を書かしてくれたなら、世界最初の男アダムの堕落を、もう少し詳しく書く積りだった。

 噫、私か全能者であれば、世界の兵隊を全部女に造り換へて、世界の戦禍を一日にして断切ってしまうであらう。私は、壮漢としで、人類相剋の罪を作るよりか、女として、純情な聖愛に歩みたい!

 私が、女性に希望を持ち、母性に新なる趨異を要求するのは、全く宇宙進化の新開展を望むが故である。

 あゝ! 私は、古き口―マの利己的相剋交明に疲れ果てた。私は、人類社会の罪悪を女性の再生力によって、浄化し、聖化し、相剋に使用するエネルギーを、真理と科学と、美と芸術のために捧げたいと思ふ。

 で、私の女性に対する希望は、どこまでも生物学的であり、宗教的である。今日の人類社会に対する絶対的失望は、私を此処にまで追詰めてしまつに。

 再び云ふ――私は、一人の女、一群の女性への讃美を書いてゐるのではない。生物学的、宗数的意味に於て、母性と女性への讃歌を捧げてゐろのである。

 この爛れた痴呆症の男性文明を、女性のみが贖罪してくれるだらう。母よ! 人類の母よ! そのことをよく自覚してくれ!

 過去十数年問、随所、随時に語り且つ書いた女性に関する私の感想が、この書物となった。演説の筆記も二三ある。然し書き足らないところを補足するために入れておいた。

 だが、私は、思想より実現の方に、更に人きな希望をかける。私は目本の女性が、一日も早く参政権を特ち、今日の曲れる政治をため直し、世界の凡ての婦人が、蹶然立って、相剋の文明を足元に蹂躙して貰ひたい!

 その日のために、私はこの書を目本の若き女性に捧げる!

    昭和十二年六月二日

        賀 川 豊 彦 
           
          津軽海峡にて






      武藤富男『賀川豊彦全集ダイジェスト』133頁~134頁

           『女性讃美と母性崇拝』について

              本書の成り立ちと基調

 この書の自序には『昭和十二年六月二日、津軽海峡にて』とある。恐らく北海道伝道への途中に書いたものであろう。自序によると過去十数年間、随所随時に語り且つ書いた女性に関する感想をまとめたものである。三十の作品と一つの結語から成っている。発行は東京慶文堂書店、昭和十二年六月廿八日に初版が出て、この年の七月五日までに三版を重ねている。

 賀川の女性観は自序にもっともよくあらわれている。先づ彼は人類の狂気沙汰を嘆く、それも相剋殺りくのためにエネルギーを浪費することを悲しむのである。昭和十二年六月二日は支那事変勃発の三十五日前であり、世界情勢は大戦前夜の様相を呈していた。この時、賀川は女性の再生力によって人類社会を浄化し、聖化し、相剋に使用するエネルギーを真理と科学と美と芸術のために捧げたいと思ったのである。世界の兵隊を全部女性にすれば戦争はやむ、壮漢として人類相剋の罪を作るより、女として純情に歩みたいと貿川はいう。

 これが本書の基調である。賀川はやさしい心の持主であった。感激的な話を聞くとすぐ涙ぐんだ。男らしい戦斗的なところのある反面、彼には女性的なところがあった。そして日常の言葉使いにも、女性語が入っていた。女性礼讃と母性崇拝は、賀川の『生物学的、宗教的』なところからだけではなく、その性格からも来ているといえよう。


                 本書の内容

 四百頁に亘るこの書の内容は一々紹介できないが、三十の作品を分類すると大体次のようになる。第一は婦人の権利である。食う権利、産み育てる権利などが権利であるが、婦人参政権については賀川はもちろんこれに貰成するが、婦人が政治家になったり大臣になったりすることには賛成していない。婦人が選挙権をもってよい政治家を選べとすすめている。

 婦人の責任、使命については、『非常時日本と女性の覚悟』『婦人の民族的責任』『現代婦人の使命」『女性論片々』『近代母性の煩悶』『近代家庭婦人の採るべき態度』などで語っている。

 宗教的なものとしては『現代婦人と宗教』『聖書に現われた母の研究』などがある。

 『我子の発見』は子の教育についてお母さんの心得べきことを教えており、『子のため守れ』は私生児論である。

 『生みの力、母の力』においては婦人の職業問題、良妻賢母主義を論じ、『働く女性に青春を与えよ』においては、働く女性にその生活と精神を安定することにより、美と青春を与えよと要求している。

 『針の穴から』は随筆的で面白い。モダーン・ガール論、お友達論、産児制限論である。モダーン・ガールは震災後に現われた女の型である。産児制限に賀川は反対しないが、色欲中心のそれには絶対に反対するという。『魂の身仕度を忘れるな』『恋愛と自由』『恋愛に悩む若き日の友に』『新貞操論』は恋愛と結婚を論じ、あるいは説いたもので、賀川は純真な恋愛を人格の結合として讃美している。

 協同組合論は別に何冊も著書があるが、ここでは協同組合運動における婦人の役割について論ずるかたわら、協同組合の目的、精神、組織、運営、実例などを説いている。『婦人運動より見たる協同組合』『婦人消費組合運動の鍵』『婦人の力と消費組合運動』がそれである。

 『衣裳と精神』は『衣裳の心理』と共通なものをもつ講演筆記である。

 『廃娼運動者に訴う』『性生活の粛清』は廃娼への烈々たる叫びであり、戦後、売春禁止法をもたらした予言者の声である。

 『看護婦崇拝論』は読みごたえのある論文である。十字架の戦士、下坐奉仕の実践者としての看護婦を五つの理由をあげて崇拝している。

 『女よ病者を慰めよ』は病人看護法である。賀川自身何度も難病をやっているので、病人としての体験から、看護人の態度や看護の仕方についてこまごまと注意を与えており、至れり尽せりである。

 以上の二篇は看護婦学校の読み物として推奨に値する。

 『近代婦人への宣言』は、今までの諸論文と重複した論旨が多い。食物論と台所改造論は異色がある。この頃農家の台所も次第に改善されてきたので、賀川がこれを見たなら喜ぶことであろう。

 『結語』は賀川流散文詩である。春の太陽よ、女の上に昇れ! と歌うのである。




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