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連載:賀川豊彦の著作ー序文など(第91回)

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「城崎にて」(今日のブログ「番町出合いの家」http://plaza.rakuten.co.jo/40223/)


  賀川豊彦の著作―序文など

    わが蔵書棚より刊行順に並べる
     
            第91回


    アルフアデス著『動物社会学概論』

       (賀川豊彦・西尾昇共訳)

        昭和13年5月12日 第一書房 238頁


 本書『動物社会学概論』も前著『世界を私の家として』とほぼ同時に第一書房より出版されました。出版にいたる経緯は、賀川による本書の「訳者序」にしるされていますので、早速今回も賀川豊彦ならではの「序」ですので、一読いただきたいと思います。



  アルフアデス著『動物社会学概論』(賀川豊彦・西尾昇共訳)

      訳者序


 本能の世界は人間が考へているより遥かに、調整せられている。それを私はアルファデスの動物社會學』で學ぶことが出来た。

 本能は盲目だ! 本能は無智だ! と私達は教へられて来た。然し『動物祀會學』に於いて學ぶことは、本能に近く生きてゐる蜂や蟻の方が必ずしも人間より馬鹿で無く、また人間が馬鹿にしてゐる猿が、却って人間より愛情に富んだ生活をしてゐることを知って、驚嘆するものである。

 私は若い時、クロパトキンの『相互扶助論』を読んで動物界に互助愛のあることを知り、人類の互助愛がその衝動の延長され、登達させられたものであることを學び得たのであった。その後、ヘンリー・ドラモンドの『人類の上進』を読んで、ダアウィンの云ふ、生存競争の外に母性愛の進化のあることを知り、母性愛の進化が、生物進化に一大貢献をなしてゐることを學び、更に、私はプリンストン大學で、比較解剖學を學んで、ドラモンドの私に教へてくれなかった点を知らんとした。

 私は、その後、「生存教祖の哲學」を一生懸命に研究し、暇ある毎に文献を渉り、研究室を訪問し、生存競孚の意味を続けて研究してゐる。その中、フアブルの『昆虫記』を見出し、之を日本の読書界に初めて紹介する光栄を担ったこともあった。

 然し、私はこの廣大な世界に於いて無限の神秘を探るものとして、永久の求道者として科學の森に真理を尋ねてゐる中に、また今度は、永年私の考へてゐた「動物社会學」をドイツ、ハレ大學動物學教授アルファデデス Alverdes博士が既に出版してゐることを最近になって濠洲に行った時に発見した。でこれを日本へ帰る途中汽船の中で読み耽ったのであった。この書は誠に簡潔に書けたものである。然し、その組織的分析は真に敬服すべきものがある。勿論その材料には蒐集すれば、まだまだ多数私の如きものでも持ってゐるが、「概論」としてはこの書に及ぶものは他に発見する事は出来ない。

 この書は実にその科學的な点に於いて新しき暗示を「社会學」一般に輿へるものである。私は、之を「人間社会」に比較して、動物社会殊に、鳥類社会を心より羨しく思ふ。私は鳥になりたい、私は人類の如き迷妄と相剋の罪悪より一日も早く逃れたい。

 私がこの書を西尾昇氏と共訳する動機は仝く此處にある。私は動物社会學からもう一度出直したい。下等動物の方が人間より遥かに社会愛に則して生活してゐることを、所謂高等動物が知る必要がある。

 私は動物社会學の名によって、人類社会學を恥ぢる。で、読者諸賢も、新しき意識を以てこの書を読まれんことを熱望する。

 此書を訳するに当たって、西尾昇氏は全篇に渡って、筆を探り、私はそれを細かく補筆した。それで、誤謬がありとすれば、私が全責任を持つ。この書の翻訳に当たって、各方面の専門的名詞を教示せられた諸先輩に心より改めて感謝する。

    一九三八・四
               
             賀 川 豊 彦
                  
              武蔵野の森にて
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