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連載:賀川豊彦の著作ー序文など(第101回)

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「神戸布引ハーブ園」(今日のブログ「番町出合いの家」http://plaza.rakuten.co.jp/40223/)


  賀川豊彦の著作―序文など

     わが蔵書棚より刊行順に並べる
       
            第101回



     『日本協同組合保険論』

      昭和15年10月20日 有光社 262頁


 本書『日本協同組合保険論』は、有光社という賀川にとって初めての出版社より出版されています。本書の序文は、「2600年10月4日」付けで「瀬戸内海豊島にて」しるされています。

 手元のものはこの初版ではなく、昭和46年7月に家の光協会発行の「協同組合の名著」第9巻として出版されたものです。本書は15章構成ですが、「名著」版では第2章から第5章は省略されています。

 その代わりに「名著」版には、黒川泰一氏による重要な「解題」(「『医療組合論』と『日本協同組合保険論』」が収められています。

 ここでは「名著」版の賀川豊彦の「序」を収めて置きます。なお、武藤富男著『賀川豊彦全集ダイジェスト』には、関連する「解説」があります。




      『日本協同組合保険論』

           序


 貧困の原因は、主として、自然的災厄と人間的災厄の二つから来る。しかし、これらの災厄を予知して、これを防止し得ることは非常に困難である。近代科学の任務は、その災厄を予知し、その災厄を克服することが最大の任務ではあるけれども、不幸にして、近代科学はその領域にまで達していない。

 この自然的及び社会的災厄を克服出来ない場合には、せめて、相互扶助の力によって災厄を救済したいという社会心理的努力が、社会保険として現われて来た。

 生物間に於ては、極端なる個人主義者というものは非常に少ない。何故なれば種の保存の必要上、親は子供のことを是非考えなければならない。そこに時間的差こそあれ、一種の時間的相続性を持つ社会性が認められる。更に子供を生む為めに雌雄関係が成立すれば、恋愛が発生し、家庭が出現する。家庭が出現すれば種族性が現われ、茲に新しい社会問題が起って来る。こうして社会性と時間上に発展する相互扶助の思念は、人類にとって殆ど本質的なものである。

 不幸にして斯く本質的な、社会的互助思想は資本主義の勃興と共に営利化せられ、人類を最も宜しい蓑虫のようなものにしてしまった。しかし余り極端に闘争が続く結果、その修正が計画せられ、終に各種の社会立法が現われるに至った。

 日本に於ける社会保険は、その本質的発達に於ては、決して西洋諸国に劣っているものではない。頼母子講の組織にしても、報徳支法にしても、或いは旧幕時代、一一箇国一三藩に実施せられていた洪水救済の地割制度にしても、或いは又、幕末より行なわれていた、福岡県宗像郡に見られるような一種の農民健康保険組合制度の如き、我が国の互助経済思想が相当に根深く、民衆の問に潜在意識として働いていたことが認識ぜられるのである。

 だが、前に述べた通り、こうして優れたる社会保険的施設は、個人主義的資本主義の悪夢によって意識化することなくして葬り去られんとした。

 この点に於てドイツ、英国、スカンジナビア諸国は早くより目覚め、殊に宗教的意識の背景を持つ民衆、或いは社会意識的運動の隆盛を極めた国家に於ては、各種の社会保険が計画せられた。そのうちでもドイツの国民健康保険、或いは英独の失業保険、スウェーデンの生命保険、ハソガリーの火災保険の如きは実に特色あるものである。殊にドイツ、ライファイゼンの協同組合を基礎とする生命保険組合は、画期的新時代を創始した。

 不幸にして目本に於て、生命保険組合は未だ法律上許されていない。しかし協同組合的精神は、社会保険の各部門に於て採用せられた。国民健康保険組合法は、その中に於ても新しき出発であると見てよいと思う。

 労働者健康保険に於ても組合保険の部門が認められ、その後に設けられた各種の社会保険に於て、組合意識的役割の与えられていないものは殆ど無いと言ってもよい。

 こうして、相互扶助的経済組織が我が国に於ても社会保険となって現われて来た以上、又それが社会性を取る以上、意識化する必要を認めざるを得なくなった。そして意識化せしめる為めには、単なる法律や、単なる機構だけでは運用出来ないことが分って来た。即ち、組合意識というものが社会保険に採用せられるようになったことは、こうした社会経済の意識化の必要上、必然的に考えられるに至ったものである。

 こうして曲りなりにも我が国に於ける社会保険は、協同組合保険の形式を備えるものが、だんだん増加して来た。そして今や十数種類に達せんとしている。

 多年協同組合保険を研究し、その組織に専念して来た私は、我が国に適当なる組合保険の書物が一冊も無いことを憂え、新体制に即応する為めにも、是非、国民に社会保険の必要性を理解してもらいたいと思って、茲に目本の協同組合保険を中心として、その西洋に於ける淵源を尋ね、更に東洋に於けるその将来性を考慮して愚見を披瀝した。

 各種の社会事業に多忙なる暇々に、寸暇を利用して纒めた結果、非常に不備な点が多いと思うが、他日これを正して更によきものとしたいと思っている。ただ日本に於ては、協同組合というものは保険事業などに手を出してはならない、という謬見を持つ人々がおることを憂え、計画経済の発達と、統制経済の運用の為めに、組合保険は意識経済の発達上、必然性を帯びるものであることを、敢て此処に論述したわけである。

   二六〇〇年十月四日

       瀬戸内海豊島にて 賀 川 豊 彦
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