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連載:賀川豊彦の著作ー序文など(第120回)

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「神戸六甲:森林植物園の長谷池」(今日のブログ「番町出合いの家」http://plaza.rakuten.co.jp/40223/)



   賀川豊彦の著作―序文など

       わが蔵書棚より刊行順に並べる
        
              第120回



     『北斗星の招宴』

      昭和24年4月10日 若芽書店 179頁


 本書『北斗星の招宴』は、「戦争前後の散文詩を中心に関東大震災後」書き綴られたもので、賀川ならではの名品です。

 ここでは賀川の「序」と武藤富男氏の『賀川豊彦全集ダイジェスト』の「解説」も添えて置きます。



     『北斗星の招宴』

        序


 明星は、まだ消えない。空は紺色に、山は紫だ。河は銀色に、個体と、個体は紺碧につながれ、太陽は、まだ、昇らない。

 清朗の気は四界を包み、昨日の塵埃は、深く地上に沈み、倦み疲れた世界が元気を回復して、太陽と共に、目醒めるのを待つてゐる。

 鶏は、もう、さめた。然し、大衆は、まだ睡つてゐる。「私」だけは、黎明の近づく前に、目をさまし、永遠の朝を迎へる準備をしてゐる。雀も、鳩も、まだ、目醒めない。だが、神さまだけは、夜寝ずに、我らを、うち見守つてゐて下さる。

 東雲も、まだ瞬かない。アオロラも、ささないので、物質に影も無い。あま♭の空気の透明に、萬物が、みな透明に考へられる。静かに、静かに、「あした」が、私を迎へてくれる。いつまでも太陽が、出なければ、よいのにと思ふ。太陽が出ると、敗惨の醜さと、人間の醜悪が、まざまざと書き出されることに、私は恥しくなる。もう少し長く、かうした瞬間が続けば善いに――。晩秋の夜明け前、歌もなくひとり、天空を静視する。驚異の瞬間――太陽がなくとも、神に感謝出来る。いや、太陽を、もう少し長く、地平線の彼辺に、隠しておきたい。自然に溶けて行く私は、特の慈愛にも、溶けて解く。

過くる日、日本を荒した颱風も、今は去って、静かな、明星が、東に輝く。紫の雲は、地平線を飾り、闇黒の夜は逃げて行く。北斗星だけは、かすかに、私を相変らず見守ってゐる。北斗星よ、おまへだけは、昼になっても、同じ位置に坐ってゐるのだね。よく辛抱してゐるね。太陽が、出たり、はいったりしてゐる中に、おまへだけは静かに、地球を見守って怪我がないように気をつけてくれるのだね。私も人生の航路難に、おまへを見失はないようにしようね。太陽が出て、世間が、騒がしくなりおまへの姿が見えなくなっても、心の底に、おまへの位置を据えておかうよ――永遠にね。

 そして、日本も、おまへと縁を切らねようにしてくれると、よいね――永遠にね!

 附 記
 この書は大平洋戦争前後の散文詩を中心に関東大震災後、私が書き綴ったものを、ひとまとめにしたものである。まだ、この中に入れないものも数多くあるが、私自ら興奮を咸じるものだけにした。人に読んで貰ふ前に、自分が読みたい心持で、こんなに綴ってみた。

 これらの散文詩は、わざと書いたのでは無く、ひとりで湧いたように思ふ。自分の今尚生きてゐることが、不思議に思はれるままに、ただ、天父への感謝にひたりつつこの散文詩を編集した。

  一九四七・一一・一九
    
           賀  川  豊  彦





    武藤富男著『賀川豊彦全集ダイジェスト』346頁

        『北斗星の招宴』について


 『北斗星の招宴』は、その序文にも示されている通り、太平洋戦争前後の散文詩を中心に関東大震災後書きつづったものをまとめた詩集であり、『わざと書いたのではなく、ひとりでに湧いた』詩歌である。しかしこれは詩というよりは随筆である。むしろ随筆と詩との中間に位する詩形であり、典型的な散文詩である。そしてこの詩形が賀川にはもっとも適していたと見え、賀川の胸中にはこうした詩が次から次へととめどなく湧き出たものらしい。『尽きざる油壷』にはこのような散文詩がおぴただしく収められている。

 そこには自然への讃美があり、神への感謝があり、苦難への礼讃があり、人間性への洞察があり、霊的瞑想と内省がある。こうした散文詩だけ集めて、これを類別大成するならば、賀川経典が成立する。散文詩こそは賀川その人であり、文学であり、生活であり、体験の記録であったといえよう。

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