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連載:賀川豊彦の著作ー序文など(第124回)

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「神戸森林植物園にて」(今日のブログ「番町出合いの家」http://plaza/rakuten.co.jp/40223/)


   賀川豊彦の著作―序文など

      わが蔵書棚より刊行順に並べる
        
             第124回



    『キリスト教入門―入門百科叢書』


      昭和25年6月20日 大泉書店 344頁


 本書『キリスト教入門』は、大泉書店の企画出版「入門百科叢書」の中の一冊に入れられたもので、鑓田研一氏の協力によって完成させています。

 第一部が19章、第二部が11章の構成ですが、大変読みやすい入門書となっています。鑓田氏はこれまでも賀川の著作を編集して数冊も重要な作品を完成させていますが、本書は賀川自ら執筆したものも多いと思われます。

 この作品は25年に刊行されて26年、27年と版を重ねて読み継がれていますが、賀川全集にはおさまりませんでした。現在賀川作品の復刊の企画もありますが、是非本書もその中に含めていただくことをお薦めしたいと思います。

 ここでは賀川の「はしがき」を収めて置きます。



       『キリスト教入門』

        は し が き


 この本はキリスト教の単なる解説書ではない。さういふ種類のものなら、幾つも出てゐる。

 私が、六十一年といふ長い生涯を通じて、世界に二つとない『聖書』をどのやうに読み、どのやうに味ひ、そしてイエスの精神をどのやうに体験したか――それをわかり易い言葉で書いたのが、この本である。だから、この本は自叙伝的な性質をもおびてゐる。

 私が少年時代をすごした阿波の吉野川の流域には、奮幕時代から白壁を誇る豪家が沢山あった。そしてそれらの豪家は、大抵家と家とが血縁で結ばれてゐた。私の父の家はその中の一軒であった。

 明治の中頃から、どういふわけか、吉野川の流域に淫蕩の気風が傅染病のやうに蔓延して行った。私の村でも、豪農の大きな倉が、私の見てゐるうちにいくつも倒れた。そして子供にまで道徳的頽廃の気分が乗り移った。

 私は十一歳の時から毎日禅寺へ通って『論語』や『孟子』の読み方を教はった。しかし自分が聖人になれさうな望みは少しも湧いて来なかった。私は暗い寂しい生活をつづけた。私がクリスチャンになるには余程の決心が必要であった。私の家は破産し、三十五銭の『聖書』を買ふのに幾日も躊躇しなければならなかった。それほど私は貧乏であった。私は教会へ行くことを許されなかった。親戚のすべては私がクリスチャンになることに反對した。

 しかし、たうとうただ一度の機會が来た。私は十五歳のとき徳島でアメリカの宣教師からパプテスマを受けた。私の胸は躍った。私は宣教師とその夫人の生活を通じてイエスを見た。そしてイエスが歩んだ道の正しさがよくわかって来た。

 私の一生を通じて最も涙ぐましい徳島の空と、その下で生活してゐるアメリカ人たちの精神が、私に愛を救へてくれた。愛する心は美しい。自然の中で愛するのは善い事である。若い時代に互に愛し合ふのは、最上の喜びである。

 私は、十五歳の時から六十一歳の今日まで、廣大な神の愛に抱擁されて、その恵みの一日一日を意味深く生きて来た。貧乏が貧乏でなくなり、寂しさが寂しさでなくなり、死にかかった時でも、憲兵に拘引された時でも、神の愛は私を別人になったほど強めてくれた。

 私は、イエスが千九百年前のユダヤ人であったことをいつも忘れてゐる。イエスは今も生きてゐる。私は、イエスによって無数の友人を得た。イエスによって妻をも得た。子供も、學問も、著書も――何もかもイエスが私に與へた。
 
 私はイエスのために何もした憶えがない。しかしイエスは私にすべてを輿へた。

 私がこの本の中に書いたのは、これらの体験である。私はそれを臆さすに書いた。

 わかり易い言葉で書いたのは、キリスト教にたいして漠然とした憧憬を抱いてゐて、まだ、どこの教會にも近づく決心のつかない人々に、ぜひ読んでもらひたいと考へたからである。もっとも、求道中の人々や、すでにバプテスマを受けて、クリスチヤンとしての生活をしてゐる人々が読んでくれても、失望させないつもりである。

 第二部の各章は少し程度が高くしてあるけれど、第一部を読んだ頭で読んでもらったら、容易に理解できると思ふ。

 この本に出てくる人名には、外國人であっても日本人であっても、すべて敬称を省いた。
 最後に言っておきたいのは、この本を書くにあたって友人の鑓田研一氏に協力してもらったことである。同氏0協力がなかったら、この本は書けたかったかもしれない。

  一九四九年十二月十八日
     
         賀  川  豊  彦
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